岸田劉生
村娘之図
1918(大正7)年 鉛筆・紙 34.4×22.6cm

小さなつわぶきの花を手にした少女は、劉生の娘・麗子の友達の於松(おまつ)です。画面右上には、「一九一八年十一月廿六日」と書かれています。着物の上に羽織を着た於松の姿からは秋の冷たい空気が感じられるようです。
麗子より3歳年上の於松の姿を劉生はこの年から3年間、たびたび描きました。劉生は於松を描いた作品について、「この画に描こうとしたものはいろいろあって一口には云えませんが鄙びた田舎娘の持つ或る美です」と述べています。「花を持つ手は素朴に、キョトンと前方を見て無心でいるような感じ」を取ったという構図には、デューラーやファン・エイクのような美の深さがあるとしています。また、「着物や羽織も実に美しいもの」で、「それが如何にも田舎風な模様はその色が退めているのと相待って不思議な美を持っている」と述べています。