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アンドレ・ドラン André Derain
静物 Nature morte
1912年 木炭・紙 61.0×50.0cm

テーブルクロスの上に、空の器やタバコ缶、蝋燭台が置かれています。こうした画題は静物画と呼ばれ、西洋では17世紀頃から盛んに描かれてきました。そこにはしばしば寓意的な意味が込められています。火のない蝋燭台は人生の虚しさ(ヴァニタス)を意味し、タバコ(古くはパイプ)や空の器もそうしたことを暗示しました。

ドランはこの頃、キュビスムという前衛的な絵画を展開します。ここではタバコ缶の表面に書かれた「TABAC」という文字(平面)とモティーフが生み出す陰影(立体)が対比されています。こうした絵画において、ドランは伝統的なモティーフに現代的な感覚を持ち込むことで、絵画の可能性を探っているかのようです。