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オディロン・ルドン Odilon Redon
ダンテとベアトリーチェ Dante et Béatrice
1914年頃 油彩・カンヴァス 50.0×65.2cm

柔らかな色彩に包まれた二人が目を閉じて静かに向き合っています。左の人物はダンテ・アリギエリ、中世イタリアの詩人です。ダンテは「地獄篇」、「煉獄篇」、「天国篇」からなる壮大な叙事詩『神曲』をあらわしたことで知られています。

『神曲』の物語は、ダンテ自身が深い森の中から地獄へと迷い込む場面から始まります。そこで古代ローマの詩人ウェルギリウスと出会い、彼の導きで罪人たちが苦しむ地獄を巡ります。地獄の大穴を抜けると、煉獄の山がそびえ、山を登るごとに罪は浄められていきました。その頂で天国を案内するベアトリーチェと出会います。

ベアトリーチェはダンテが幼い頃から熱愛した実在の女性であり、彼女は24歳で夭折しました。『神曲』において、ダンテは長い地獄と煉獄を経て、ついにベアトリーチェとの再会を果たします。煉獄山の頂の上で、眼を閉じたベアトリーチェと向き合うダンテの心には、まるで静寂が広がるかのようです。