金光明最勝王経註釈断簡

金光明最勝王経註釈断簡

・年代:平安時代前期(9世紀)
・法量:縦27.3㎝ 横51.6㎝

「金光明最勝王経注釈」は、東大寺の明一(728~798)が撰した文献で、鎮護国家の力があるとして重んじられた金光明最勝王経の解説書です。本品はこれを平安時代前期に書写したもので、本文を墨字で書写した上、白字で読みや簡単な解説を書き込んでいます。本経はもと比叡山横川の飯室別所に長く伝えられたところから、飯室切の名で知られています。本品は長い歴史の中で、三筆の一人である嵯峨天皇が書写したものに、空海が白字を付したと伝えられ、珍重されてきました。残念ながら現在、この説は否定されていますが、本経の大振りで力強い筆跡は平安時代前期を代表する書として高く評価されています。

フリガナとして付された白字は漢字の一部を崩して用いたものであり、日本固有の仮名文字が成立する過程を示すものとして、国語学上極めて貴重な資料となっています。