ピエール・ボナール 《ノルマンディー風景》

ピエール・ボナール
ノルマンディー風景
1925年 油彩、カンヴァス 54.0×47.5cm

Pierre Bonnard
Landscape of Normandy
Paysage de Normandie
1925, Oil on canvas, 54.0 × 47.5 cm

本作の裏には、副題として「突然の日差し(coup du soleil)」と記されています。おそらく厚い雲の間から強い日差しが差し込んだ瞬間を捉えたのでしょう。生い茂った緑や草原には光が満ち溢れています。わずかな雲間から日差しが届くそのようすは、異なった色彩を見せる左右の木々や牛にあらわれています。その奥には紫や黄などきらめくような色彩を反映しながら、セーヌ川が流れています。
1912年、ボナールはヴェルノン近郊のセーヌ河岸の斜面に建てられた別荘「マ・ルロット(私の家馬車)」を購入しました。そのテラスからは低地を流れるセーヌ川と対岸の町ヴェルノンを望むことができました。ボナールは自宅の庭をあまり整備せず、自然のままにすることを好んだといいます。「マ・ルロット」の近くで描かれた本作には、ボナールが好んだノルマンディーのありのままの自然を見出すことができます。

The back of this work bears the subtitle "Sudden Sunshine (coup du soleil)." It likely captures the moment when strong sunlight pierced through thick clouds. The lush greenery and meadow are bathed in light. The sunlight breaking through a small gap in the clouds is reflected in the different colors of the trees and cows on either side. In the background, the Seine River flows, reflecting shimmering colors such as purple and yellow.

In 1912, Bonnard purchased a villa called "Ma Roulotte" ("My Caravan") built on the slopes of the Seine River near Vernon. From its terrace, he could look out over the lowlands of the Seine River and the town of Vernon across the river. It is said that Bonnard preferred to leave his garden mostly untouched, allowing it to remain natural. This work, painted near "Ma Roulotte," reveals the natural beauty of Normandy that Bonnard cherished.

クロード・モネ 《藁ぶき屋根の家》

クロード・モネ
藁ぶき屋根の家
1879年 油彩・カンヴァス 48.5×64.5cm

Claude Monet
The Thatched-Roof House
La chaumière

1879, Oil on canvas, 48.5 × 64.5 cm

1878年8月、モネはパリから北西に約70キロ離れたセーヌ川沿いの小村ヴェトゥイユに移り住み、この地で3年余りを過ごしました。その間には妻カミーユが亡くなるなど、ここでの生活はモネの人生でつらく、貧しい時代でもありましたが、この時期に制作された作品の多くがやがて後の連作シリーズを生む糧となります。
本作では全体的に落ち着いた色調の中、筆触分割により前景の草花が鮮やかに咲き乱れ、爽やかな空は力強い筆致で大気の流れをはらんでいます。

In August 1878, Monet moved to the small village of Vétheuil, located about 70 kilometers northwest of Paris along the Seine River, where he spent over three years. During this time, his wife Camille passed away, and the period was one of hardship and poverty in Monet's life. However, many of the works created during this period would later serve as the foundation for his subsequent series of paintings.

In this piece, the overall subdued color palette is contrasted with the vivid blooming of flowers in the foreground, created through brushstroke division, while the fresh sky is depicted with strong brushwork, capturing the flow of the atmosphere.

岸田劉生 《村娘之図》

岸田劉生
村娘之図
1918(大正7)年 鉛筆・紙 34.4×22.6cm

Ryusei Kishida
Portrait of a Village Girl
1918 (Taisho 7), Pencil on paper, 34.4 × 22.6 cm

小さなつわぶきの花を手にした少女は、劉生の娘・麗子の友達の於松(おまつ)です。画面右上には、「一九一八年十一月廿六日」と書かれています。着物の上に羽織を着た於松の姿からは秋の冷たい空気が感じられるようです。

麗子より3歳年上の於松の姿を劉生はこの年から3年間、たびたび描きました。劉生は於松を描いた作品について、「この画に描こうとしたものはいろいろあって一口には云えませんが鄙びた田舎娘の持つ或る美です」と述べています。「花を持つ手は素朴に、キョトンと前方を見て無心でいるような感じ」を取ったという構図には、デューラーやファン・エイクのような美の深さがあるとしています。また、「着物や羽織も実に美しいもの」で、「それが如何にも田舎風な模様はその色が退めているのと相待って不思議な美を持っている」と述べています。

The girl holding a small Tsubaki flower is Omatsu, a friend of Ryusei's daughter, Reiko. The top right of the picture reads "November 26, 1918." The image of Omatsu wearing a haori over her kimono evokes the cold autumn air.

Ryusei frequently painted Omatsu, who was three years older than Reiko, over the course of three years starting from this year. Regarding his works depicting Omatsu, Ryusei commented, "There are various things I tried to capture in this painting, which cannot be summed up in one word, but it is a certain beauty possessed by a rustic country girl." He described the composition as having "a depth of beauty akin to Dürer or Van Eyck," with "the hand holding the flower being simple, and the expression looking forward with an innocent gaze." He also remarked that "the kimono and haori are truly beautiful," and "the rural patterns and the faded colors together create a mysterious beauty.

特別展『伊豆の平安仏』のカタログ発行のお知らせ

リニューアル1周年記念特別展『伊豆の平安仏―半島に花ひらいた仏教文化―』の展覧会カタログを発行しました。販売価格は500円、A4版48ページで出品中の仏像18点をご紹介しております。
カタログは上原美術館での販売のほか、郵便局の定額小為替、現金書留でも販売いたします。

【郵送での購入方法】
1. 現金書留、または定額小為替にて、カタログ代金(1冊500円)をお送りください。
送付先:〒413-0715 静岡県下田市宇土金341
公益財団法人上原美術館 『伊豆の平安仏』カタログ販売係 行
2. 代金受領後、美術館より速やかにカタログを発送いたします。

 

仏教館 関連イベント *11/24のイベントは満席となりましたので、申込を終了しました
ミニ講演会「伊豆の平安仏―半島に花ひらいた仏教文化―」
日時 2018年11月3日(土)/11月24日(土) 14:00~15:30 *両日とも同じ内容です
講師 田島整(当館主任学芸員) 会場 上原美術館 近代館 会議室
定員 先着50名、要予約・要入館券
予約方法 郵送、またはメール(info@uehara-museum.or.jp)にて①お名前、②参加人数、③ご住所、④お電話番号、⑤ご希望日をお知らせください。後日、チケットを郵送いたします。

近代館 関連イベント *終了しました
ミニ講座「クローズアップでみる須田国太郎作品の魅力」
日時 2018年11月10日(土) 14:00~15:00 講師 齊藤陽介(当館学芸員)
会場 上原美術館 近代館 会議室 定員 先着50名、予約不要・要入館券

仏教館・近代館 関連イベント
学芸員によるギャラリートーク(作品解説)
日時 会期中の毎月第3土曜日 11:00~/
14:00~ 仏教館・近代館、各30分ずつ
会場 上原美術館
※要入館券

新しい展覧会『伊豆の平安仏』(仏教館)、『須田国太郎』(近代館)が始まりました。

9月22日(土)より、リニューアル1周年記念 特別展『伊豆の平安仏―半島に花ひらいた仏教文化―』を仏教館にて、企画展『須田国太郎―上原コレクションから―』を近代館にて開催します。

『伊豆の平安仏』展では、伊豆半島に伝わる平安の仏像を一堂に展示。寺外初公開となる千手観音立像(金龍院・伊豆市)や60年に1回の本開帳となる不動明王立像(松尾不動堂)、東日本最古級の如意輪観音像など、貴重な平安仏の数々をご紹介いたします。

『須田国太郎』展では、上原コレクションの特徴の一つである須田国太郎を展示し、須田が追及した墨色(黒)の魅力をご紹介しております。

 

展示替え休館のお知らせ(9/18~9/21)

9月18日から9月21日までの4日間、展示替えのため休館いたします。

9月22日からは、仏教館にてリニューアル1周年記念特別展『伊豆の平安仏―半島に花ひらいた仏教文化―』、近代館にて企画展『須田国太郎―上原コレクションから―』を開催いたします。新しい展覧会もぜひご覧いただければ幸いです。

【仏教館】リニューアル1周年記念 特別展 伊豆の平安仏―半島に花ひらいた仏教文化―

仏教館 リニューアル1周年記念 特別展 伊豆の平安仏―半島に花ひらいた仏教文化―

仏教館 リニューアル1周年記念 特別展 『伊豆の平安仏―半島に花ひらいた仏教文化―』

伊豆半島は、古来、海上交通の要でした。伊豆の港は船の出入りで栄え、航海の安全と、そこに生活する人々を守る仏像が安置され、今に伝えられています。一方、伊豆は景勝地としても知られています。山や滝、切り立つ断崖、洞穴、温泉は、神仏の霊威のあらわれ、神仏が鎮座する地と考えられ、寺院が建立されました。
上原美術館は35年に渡って伊豆の寺院や地域に伝わる仏教美術の調査を行ってきましたが、伊豆が仏教美術の宝庫であり、平安時代の仏像が多く伝えられていることを明らかにすることができました。本展では、調査によって見出された伊豆の平安時代の仏像の中から、十数体を厳選して展示します。展示される仏像には、数十年に一度のみ開帳される厳重な秘仏や、通常非公開の仏像、寺外初公開の仏像も含まれています。知られざる伊豆の平安仏の名像をご覧ください。

【近代館】『須田国太郎―上原コレクションから―』

近代館 企画展『須田国太郎―上原コレクションから―』

近代館 『須田国太郎―上原コレクションから―』

本展は当館で6年ぶりとなる須田国太郎(1891~1961)の回顧展です。須田作品は、上原コレクションの中心であり、国内でも有数の規模を誇っております。
京都生まれの洋画家・須田国太郎は、絵画の理論と実践を生涯探求した学究の徒であり、その壮大な視野から「東西絵画の綜合」の上に立つ、新しい絵画を追求した稀有な画家です。
本展では、須田が近代絵画の課題のひとつと考えていた「墨色(黒)」の扱いに注目します。《卓上静物(バラ)》では、墨色の濃淡や、下塗りの変化が、墨色の多彩な表現を生んでいます。そこには東洋の水墨画とは違う、油墨画ともいうべき表現が展開され、須田が挑んだ「東西
絵画の綜合」の一端を見ることができるでしょう。
展示では、須田の画風の展開を追いかけるように、留学時代の褐色表現、円熟期の透明感のある墨色。そして最晩年のより多彩な色彩と絵肌表現を、油彩画、版画、デッサン、墨絵などからご紹介いたします。

上原美術館