ゴッホ講演会(2016年10月10日)を開催しました

第19回講演会「ゴッホ若き日のデッサン≪鎌で刈る人≫、そして晩年の絵画へ」

■講師:シュラール・ファン・ヒューフテン氏 Sjraar Van Heugten
(美術史家、元ファン・ゴッホ美術館コレクション部長)
■日時:2016年10月10日(月・祝) 13:30~15:00
■会場:下田市民文化会館 大ホール

オランダより画家ゴッホの世界的研究者であるシュラール・ファン・ヒューフテンさんをお招きして、講演会を開催しました。
ヒューフテンさんは、当館が収蔵するゴッホ≪鎌で刈る人(ミレーによる)≫を「再発見」し、2015年にヨーロッパでの展示を実現してくださいました。そうしたご縁から今回、下田で講演を行っていただくことになりました。
ゴッホは27歳のときに画家を志しますが、はじめに取り組んだのは敬愛するミレーを模写することでした。当館のデッサンは初期の鉛筆によるミレーの模写の中で唯一残っているものです。
牧師を目指したゴッホにとって、「鎌で刈る人」というテーマは死を暗示する宗教的な意味があったといいます。ゴッホは10年という短い画業の中で度々、このテーマを描きました。ゴッホは風景画の中にさえ「鎌で刈る人」を描き込んでいます。こうした「麦の収穫」や「刈る人」というテーマには、生命のサイクルに向き合うゴッホのまなざしを見出すことができます。そして、画業のはじまりに描かれたデッサン≪鎌で刈る人≫には、ゴッホ芸術の本質を垣間見ることができます。
ヒューフテンさんは初めて下田でゴッホの初期デッサンを見たときのエピソードや、ヨーロッパで当館の作品を展示したときの写真などを交えながら、ゴッホ芸術の本質についてお話くださいました。

lecture2016

展覧会『ゴッホとゴーギャン展』(東京都美術館)に収蔵品2点を出品しました

東京・上野の東京都美術館にて開催されている展覧会『ゴッホとゴーギャン展』(2016年10月8日~12月18日)に、当館の収蔵品を出品しました。オランダのファン・ゴッホ美術館やクレラー=ミュラー美術館などの名作を通じて、ゴッホとゴーギャンの芸術的な繋がりを見ることができます。当館の作品はモネとピサロが二人の画家に与えた影響を紹介しています。

―当館より出品中の作品

・クロード・モネ≪藁ぶき屋根の家≫1869年

・カミーユ・ピサロ≪エラニーの牧場≫1885年

カミーユ・ピサロ-エラニー牧場-1885ss

小林古径 《芥川》

小林古径
芥川
1926(大正15)年頃 絹本彩色・軸装 47.5×75.0cm

本作は伊勢物語の第六段、芥川に想を得た作品です。物語は主人公の男が思い続けた女性を連れて逃げる場面から始まります。二人は芥川の近くまで来ますが、夜が更けて雷雨に遭ったため、蔵に女性を隠して戸を守ります。しかし雷鳴に紛れて闇の中から鬼があらわれて食べてしまい、朝には誰の姿もありませんでした。
蔵で眠る女性は長い髪が床にほどけ、美しい着物の模様が闇から浮かび上がります。そこに雷鳴に紛れて鬼があらわれます。古径はその劇的な場面を厳しい線描と余白の繊細な薄墨により見事にあらわしています。

 

笈(おい)

動画による作品解説

笈(おい)
室町時代(15世紀後半) 木造
普門院(河津町逆川)静岡県指定文化財

笈は旅する僧が背負う運搬具で、現在のリュックサックにあたります。箱型で、背に接する側の下端左右に2本の脚、背面下部中央に雲形の脚を作って床にすえています。内部は3段に分かれ、背に接する側に各3段、左右2枚の板を取り付けて扉とし、上段中段には1枚、下段に1枚、計2枚の帖木をはめて閉じます。簡素かつ実用的なもので、普門院を開いた禅僧、模庵宗範が用いたものと考えられます。破損することの多い笈の古作例として、貴重な文化財です。

小野憲一 《Innerline》

小野憲一
Innerline
2015年 アクリル・カンヴァス 100.0×100.0cm 個人蔵

Innerlineは現代作家・小野憲一によるアクリル絵画。線が空間そのものに変化する不思議な絵画空間は、胎児が胎内で感じ取る風景のよう。その曖昧さは瞼を閉じたときの陰翳の奥に浮かび上がる、内なる光のようにも感じられます。

 

上原美術館