地蔵菩薩像

動画による作品解説

地蔵菩薩像
安土桃山時代(天正20年/1592) 加賀宗圓 作
一木割矧ぎ造り・玉眼・漆箔
土沢地蔵堂(熱海市伊豆山土沢) 熱海市指定文化財

熱海の北東、日金山中腹にある土沢地蔵堂の本尊です。『地蔵菩薩霊験記』によると、熱海は「炎熱地獄の小端」であり、日金山は亡者を救済する地蔵の住処とされていました。本像の年代には諸説ありましたが、当館の調査で見出された木札解読により、天正18年(1590)豊臣秀吉によって焼かれた後、鎌倉大仏所の加賀宗圓が復興造像したものと判明しました。木札には供養の際に「さとう(茶頭)」による茶会が催されたらしいことなど興味深い記事があり、今後の研究が期待されます。

毘沙門天像

動画による作品解説

毘沙門天像
南北朝時代(14世紀) 木造・玉眼・彩色
個人蔵(伊東市宇佐美) 伊東市指定文化財

伊東市宇佐美の旧家、濱崎家に伝わる毘沙門天像です。関ヶ原の合戦で敗北した石田三成に属した濱崎家の祖先が、逃れる際、持参したという伝承があります。
構造は前後二材を寄せてつくる寄木造りで、両腕以下を別に造って寄せています。頭部は襟際で一度割り離して玉眼を入れ、両足も胴体から一度割り離して仕上げる割足です。迫力ある面貌、力強い体躯などから14世紀の像と考えられ、像内に寛政4年(1792)年、血液で書写した経典が納められています。

菩薩像

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菩薩像
平安時代(10世紀) 木造・彫眼・素地
河津平安の仏像展示館/南禅寺(河津町谷津)静岡県指定文化財

南禅寺の平安仏群の一体です。両腕や垂下する天衣までを含む像全体をカヤの一材でつくる一木造りで、干割れを防ぐ内刳りもありません。引き締まった肉身、腰前の鎬が立った衣文、足元の大波小波が打ち寄せるような翻波式衣文は古風で、一木造りの技法とあわせ考えると、10世紀の像と思われます。9世紀後半から10世紀は、伊豆諸島の火山活動が活発化していいました。南禅寺仏像群は、この災厄を鎮静化する目的で中央政府によって制作された可能性があります。

菩薩像

動画による作品解説

菩薩像
平安時代(12世紀) 木造・彫眼・素地
河津平安の仏像展示館/南禅寺(河津町谷津)河津町指定文化財

河津町谷津の南禅寺(なぜんじ)には、26体の平安仏と23点の仏像断片が伝えられています。本像はそのうちの一体で、山津波で被災した姿ながら、頭上の髻と、上半身裸形で天衣をまとう姿から菩薩の像とわかります。内部に大きな空洞があり、各所に節があるなど、明らかに質の悪い材を用いており、細身で大きく湾曲した体、小さな頭に不釣り合いな太い首などは材の形に制約された造形で、霹靂木(へきれきぼく:落雷した木)などの特別な霊木を用いた像と考えられます。

薬師如来像

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薬師如来像
平安時代(10世紀) 木造・彫眼・漆箔
観音寺(下田市須崎) 下田市指定文化財

かつて厳重な秘仏として、30年に一度だけ開帳された霊像です。頭体を一材でつくる一木造りで、別造の両手や脚部を寄せていますが、台座と表面の金も含め、江戸時代に補われたものに代わっています。
奥行きのある体躯は量感に満ち、腹前の衣文には、大波小波が交互に打ち寄せるような翻波式衣文の名残が認められることから、10世紀の像と考えられます。頭髪と肉髻の境が不明瞭で、帽子をかぶるように見えるのもこの時期の特徴。下田市内最古の像の一体です。

特別展『知られざる伊豆の仏教美術』が開幕しました

10月10日より、特別展『知られざる伊豆の仏教美術』、企画展『四季の情景』が開幕しました。
仏教館では、堂外初公開となる地蔵菩薩像(熱海市指定文化財)、毘沙門天像(伊東市指定文化財)など、通常みることのできない仏像が一同に展示されるほか、伊豆に伝わる涅槃図5点を展示いたします。
近代館では、新収蔵初公開となる鏑木清方≪十一月の雨≫をはじめ、横山大観、竹内栖鳳、小倉遊亀など、日本画がにみる四季の情景をご紹介しております。

 

安井曽太郎≪焼岳(上高地晩秋図)≫

安井曽太郎
焼岳(上高地晩秋図)
1941(昭和16)年 油彩・カンヴァス(パネル張り) 39.0×50.7cm

焼岳は長野県と岐阜県にまたがる活火山で、その周囲には北アルプスの玄関口・上高地が広がります。焼岳は約2,300年前に最後のマグマ噴火を起こし、今も噴煙を上げています。大正4(1915)年には水蒸気爆発によって麓の梓川(あづさがわ)に土石流が流れ込んで、大正池が生まれました。木々が沈む清らかな水面には、季節によって美しく色彩を変える焼岳が映ります。
昭和13(1938)年、安井曽太郎は前年に患った中耳炎の静養を兼ねて上高地に滞在、2年後にもこの地を訪れて本作を描きました。「燒岳は終始噴煙していて仲々面白い山で、見所によるとちょっと凄い山に見えた」、「お手本の自然は少しもごたごたせず、全景が一つになって見えた。自然の調子にはくるいがないのだ」と安井は述べています。本作では暗い青であらわされた大正池が、立ち枯れた白樺のリズムによって明るい遠景へと続き、山を染める黄葉と、所々露わになった岩肌が画面を装飾的に彩ることで、秋に燃える焼岳の姿が美しく描き出されています。

オディロン・ルドン≪花瓶の花≫

オディロン・ルドン Odilon Redon
花瓶の花 Fleurs au vase
1910年頃  パステル・紙 55.0×40.0cm

「花がパステルになったのか、パステルが花に変容したのかだれも知らない」。ルドンのパステル画を、当時の批評家フォンテナスはそう表現している。かつて“黒”を追求していたルドンの画業は、1890年頃から徐々に色彩の追求へと移行していった。「私は色彩と結婚しました。もうそれなしで過ごすことはできません」と自ら語るこの転換は制作上の理由ばかりでなく、カミーユとの結婚や自身の病気、少年時代を過ごした荘園ペイルルバードの売却など外的な要因もあった。この頃の手紙で「私が少しずつ<黒>を見捨てているというのは本当です。ここだけの話ですが、それは私をくたくたにさせるのです」とも述べている。
そうした中で出会ったのがパステルという素材だった。「私はパステルで、疲れもなしに制作します。それは描くように仕むけてくれるのです」。ルドンはパステルを用いて花や神話など彩り溢れる世界を展開する。しかし、ルドンの画面から“黒”が消え去ってしまったわけではない。本作でも、色とりどりの花が活けられた花瓶の脇に広がる“黒”が、どの色彩にもまして花の生命を浮かび上がらせている。

 

東文研ハンズオン・セミナー『文化財写真入門』開催のお知らせ

東京文化財研究所 文化財の記録作成とデータベース化に関するハンズオン・セミナー
文化財写真入門―文化財の記録としての写真撮影実践講座

本セミナーは文化財の記録としての写真撮影について、静岡の博物館・美術館および自治体の文化財担当者を対象として、東京文化財研究所が主催するハンズオン形式の講習会(実習講座)です。デジタルカメラの基本的な取扱いや調査の事例紹介のほか、普段お使いのデジタルカメラをお持ちいただき、実際に仏像や絵画を撮影しながら、課題を共有・解決していきます。

【講座概要】
開催日時:2020年8月24日(月) 10時~17時(開場9:30)
開催場所:上原美術館 アトリエおよび近代館 会議室 〒413-0715静岡県下田市宇土金341
主  催:独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所
後  援:静岡県博物館協会
協  力:公益財団法人上原美術館
募集人数:15名 (抽選/8月14日締切) ※参加無料
対  象:静岡県の博物館・美術館、自治体の文化財担当者
持ち物: デジタルカメラと三脚(コンパクトデジタルカメラ、スマートフォン可)
*普段、撮影に使用しているカメラで仏像や絵画を撮影して、疑問点や課題の解決を探ります。

【主な内容】
午前の部(10:00~12:00) ・城野誠治(東京文化財研究所) 「文化財写真で大切なこと」
午後の部(13:00~17:00) ・撮影実習 講師:城野誠治
*上原美術館所蔵の仏像や絵画を撮影し、普段の撮影業務で困っていること、
疑問点を共有し、解決方法を探ります。

【申込方法】
①お名前、②ご所属・職名、③電話番号、④メールアドレスを本文に記載の上、下記アドレスまでお申し込みください。8月17日頃に抽選結果をご報告します。

【申込先アドレス】
gakugei@uehara-museum.or.jp

【お問い合わせ】
公益財団法人 上原美術館
担当:齊藤陽介
〒413-0715 静岡県下田市宇土金341
Tel. 0558-28-1228
E-mail: gakugei@uehara-museum.or.jp

 

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