アンドレ・ドラン André Derain
レ・レックの森の中 Sous-bois aux Lecques
1922年頃 油彩、カンヴァス 60.0×73.0cm
1919年に第一次世界大戦の徴兵から戻ったドランは、1921年のイタリア旅行を機に古典芸術に傾倒を深め、造詣の節度と美しい秩序、厳密な構成を重んじた作風へと移行していきました。
本作もまた、厳密な構成に基づく風景画です。画面の下層からは 約15cm四方ずつに区切られた赤い構成線が垣間見え、木々が生み出す主要な造形はそれに基づいて構成されています。中央の木は画面のほぼ中央に配されており、対角線を生かした枝や葉のうねりが画面全体に動きを生み出しています。ほぼ前景と中景のみで構成された絵画空間は、規則的な筆触と強調された明暗で形作られ、キュビスムやセザニスムにおける探求が古典的構成のもとで展開されているといえるでしょう。1920年代、ドランは毎夏を決まって南仏レ・レックとその周辺で過ごし、その風景を数多く描きました。本作もそうした中の1枚です。