17_kishida_m

岸田劉生
静物
1921(大正10)年 油彩・カンヴァス 38.0×45.5cm

机の上に4つの果物と一つの器が置かれています。それらのモティーフはまるで人物が佇むかのように不思議な存在感を漂わせています。劉生自らのある静物画について次のような詩を残しています。「君は其處に丁度人のない海岸の砂原に/生れて間もない赤子が二人、默つて靜かに遊んでゐる姿を思はないか/その靜かさ美しさを思はないか/この二つの赤子の運命を思はないか」。一見、机の上に無造作に並べられた本作のモティーフにも、劉生が見出した「実在の神秘」が隠されているかのようです。