松林桂月
白萩
1953(昭和28)年頃 絹本墨画淡彩、額装 47.0×56.0cm
白く小ぶりな花をつけた萩が墨の濃淡を生かして描かれています。その前には、淡い色彩によるススキが秋風に揺れるようにすっととらえられています。どちらも秋の風物として、和歌などにもたびたび詠われてきました。
作品右下に記された漢詩には「流水冷冷何処岸 夕陽浴浴幾家村」とあり、秋の夕暮れ時、村の家々に夕日が降り注ぐ情景が目に浮かぶようです。そこには、白い花と故郷山口の萩を重ねて、東京で制作に打ち込む桂月の心情が込められているのかもしれません。