紫紙金字華厳経断簡

紫紙金字華厳経断簡

・年代:奈良時代(8世紀)
・法量:縦26.5㎝ 横49.9㎝

ムラサキソウで染めた紫紙に金泥で八十巻本の華厳経を書写した古写経で、本経はその一紙分の断簡です。奈良時代の聖武天皇は、741年に国分寺建立の詔を発布し、国ごとに国分寺と国分寺を建立、国分寺には金光明最勝王経、国分尼寺には法華経をそれぞれ十組ずつ書写させ、安置させたことが知られています。その後、聖武天皇は大仏を造立し、諸国の国分寺を統べる総国分寺として東大寺を建立しましたが、本経はこの時、大仏に奉納されたものと考えられます。

写経の最高峰に位置づけられる天平写経の中にあって、本経の一点一画を疎かにしない謹厳端正な書風は、天皇の勅願による官立写経所における写経事業の高い技術と質を感じさせる名品です。