川端康成は紀行『伊豆の旅』において、「伊豆は南国の模型である」と書きました。これは伊豆の風光や植生が本州の他地域と異なり、南方を思わせることを述べたものですが、白砂の浜、入り組んだ海岸線とそこに営まれた小さな港町、照葉樹に覆われた山々に抱かれた集落、河川が開いた小平野、火山の恵みの温泉…地区ごとに多彩な顔を見せる伊豆半島は、様々な要素が詰まって、さながら模型のようです。このように伊豆は多様な小世界が集まって構成されていますが、それぞれの世界には、その地に生き、歴史を刻んだ人々が信仰した仏像が大切に守り伝えられています。
本展ではこのような伊豆の仏像のうち、平安時代から鎌倉時代に造像されたお像を中心に二十数体を厳選して展示いたします。
表の十一面観音像は、昭和61年の当館の調査により、南伊豆町の漁港、入間の海蔵寺から見いだされた像です。この仏像は調査後、厨子のなかに厳重に納められ、長らく秘仏となってきましたが、およそ40年ぶりの公開が実現しました。このように本展は、寺院やお堂を守る地域の方々の特別なご厚意でご出展いただいた、秘仏や通常非公開の仏像を展示する特別展です。伊豆のみほとけとの一期一会の出会いを是非お楽しみください。
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