オディロン・ルドン 《ダンテとベアトリーチェ》

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オディロン・ルドン Odilon Redon
ダンテとベアトリーチェ Dante et Béatrice
1914年頃 油彩・カンヴァス 50.0×65.2cm

柔らかな色彩に包まれた二人が目を閉じて静かに向き合っています。左の人物はダンテ・アリギエリ、中世イタリアの詩人です。ダンテは「地獄篇」、「煉獄篇」、「天国篇」からなる壮大な叙事詩『神曲』をあらわしたことで知られています。

『神曲』の物語は、ダンテ自身が深い森の中から地獄へと迷い込む場面から始まります。そこで古代ローマの詩人ウェルギリウスと出会い、彼の導きで罪人たちが苦しむ地獄を巡ります。地獄の大穴を抜けると、煉獄の山がそびえ、山を登るごとに罪は浄められていきました。その頂で天国を案内するベアトリーチェと出会います。

ベアトリーチェはダンテが幼い頃から熱愛した実在の女性であり、彼女は24歳で夭折しました。『神曲』において、ダンテは長い地獄と煉獄を経て、ついにベアトリーチェとの再会を果たします。煉獄山の頂の上で、眼を閉じたベアトリーチェと向き合うダンテの心には、まるで静寂が広がるかのようです。

 

 

クロード・モネ 《雪中の家とコルサース山》

クロード・モネ Claude Monet 
雪中の家とコルサース山 Maisons dans la neige et mont Kolsaas
1895年 油彩・カンヴァス 64.2×91.2cm

1895年2月から2ヶ月の間、モネは義理の息子を訪ねてノルウェーに滞在し、光と色彩の効果をコルサース山の連作で探求しました。本作もそうした中の1点です。近景には屋根に雪の積もった家並みを描き、遠くには雪を頂くコルサース山が描かれています。山や雪に落ちる影は単純な黒や灰色ではなくピンクや青色で、赤や茶色をした家の壁に反射する光は青色であらわされています。影は全くの暗闇ではなく弱い光があり、時間や天気によって変化することを意識したモネは、コルサース山などの連作を通じて光の効果を探求し続けました。

 

 

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《アルジャントゥイユの橋》

 

オーギュスト・ルノワール Pierre-Auguste Renoir
アルジャントゥイユの橋 Pont du chemin de fer à  Argenteuil
1873年 油彩・カンヴァス 46.0×63.0cm

鉄橋が架かるセーヌ川の様子が自由なタッチで描かれています。川面は短い平筆のタッチでリズミカルに塗られて、その感覚はセーヌ川を吹き抜ける風を想像させるかのようです。鉄橋の影の灰色は光と影のグラデーションではなく、色の面としてあらわされており、川面に盛り上げられた白い絵具とともに降り注ぐ陽光の瞬きが感じられます。

この時期、ルノワールはしばしばアルジャントゥイユに住むモネを訪ねて、ともに制作をしました。二人は戸外にイーゼルを立てて同じ風景を描き、「筆触分割」によって色彩で画面を構成する新しい絵画を模索しました。こうした作品は翌年に開催される「第1回印象派展」に出品され、大きな反響を呼びました。自由な感覚に満ちたこの風景画は、印象派の誕生を象徴する作品の一つといえるでしょう。

 

 

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《果物の静物》

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オーギュスト・ルノワール Pierre-Auguste Renoir
果物の静物 Nature morte aux  fruits
1902年頃 油彩・カンヴァス 18.5×32.5cm

ぶどうやりんご、ザクロなどの瑞々しい果物が輝くような色彩で描き出されています。ぶどうには透明な薄い絵具が塗り重ねられ、下の層を生かすことで明暗が表現されています。りんごは透明と不透明の赤を使い分けて、ザクロは印象派風の筆跡を残した白、赤、黄、緑などを大胆に用いることで、異なる質感があらわされています。

こうした透明感のある絵具の使用はルノワールが伝統的な技法に学んだものでした。1870年代、ルノワールは筆跡を並べる印象派の技法を多用しましたが、その後、行き詰まりを感じ、18 世紀以前の古典絵画に学んで塗り重ね(グラッシ)の技法を再び研究して自らの絵画を発展させました。

 

 

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《横になった婦人》

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オーギュスト・ルノワール Pierre-Auguste Renoir
横になった婦人 Femme couchée
1912年 油彩・カンヴァス 24.5×33.3cm

あたたかな陽光のなか、赤い花の髪飾りをつけた女性が柔らかな草むらの上に寝そべっています。女性が着るワンピースの描写は、動きやすくゆったりとした布地の質感をとらえています。女性のかたわらには麦わら帽子と花の入ったバスケットが置かれ、田園の穏やかな雰囲気を伝えています。ここには、ルノワールが晩年を過ごした南仏の町カーニュの印象が、女性の衣装とともに鮮やかに描かれています。

 

 

アンリ・ルソー 《両親》

アンリ・ルソー Henri Rousseau
両親 Les Parents
1909年頃 油彩・板 17.0×20.5cm

コートを着た画家の父と花を持つ母は、ルソーの両親がモデルとなっています。その表情は素朴ながら愛らしく、どこか親近感がわいてきます。

この油彩画はかつて画家・藤田嗣治が所蔵していました。藤田は晩年、パリ郊外の自宅に父の写真とともにこの作品を飾ったといいます。

本作は上原昭二氏より米寿を記念して、昨年12月に当館へ寄贈されました。この小さな油彩画には、画家やコレクター、さまざまな人々の両親への思いが込められているようです。

ポール・ゴーガン 《森の中、サン=クルー》

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ポール・ゴーガン Paul Gauguin
森の中、サン=クルー Dans la forêt, Saint-Cloud
1873年 油彩・カンヴァス(カルトン張り) 24.8×34.5cm

この作品はゴーガンがまだ株の仲買人をしていた頃の作品です。当時、ゴーガンは休日に知人を訪ねて、しばしばパリ近郊サン=クルーで制作しました。森の中で人々がピクニックする風景には、幸福な時間が流れているようです。

1883年、株価の暴落を機にゴーガンは画家の道を歩み始めました。生活に困窮した妻は、実家のコペンハーゲンに戻ります。ゴーガンは一人絵画を探究し、タヒチで最期を遂げました。この作品は、妻メットが生涯、大切にしていました。この穏やかな風景には、ゴーガンとの幸福な思い出に満ちていたのかもしれません。

 

 

フィンセント・ファン・ゴッホ 《鎌で刈る人(ミレーによる)》

フィンセント・ファン・ゴッホ Vincent van Gogh
鎌で刈る人(ミレーによる)  Moissonneur à la faucille (D'après Millet)
1880年頃 鉛筆・水彩・紙 55.5×30.5cm

本作はゴッホが27歳で画家を目指しはじめた頃の貴重なデッサンです。ゴッホは、はじめ敬愛するミレーの版画「野良仕事」シリーズをたくさん模写しますが、それらのほとんどは後にゴッホ自ら破棄してしまいました。その中で唯一残っていたのがこのデッサンです。もとになった版画は、縦13センチほどの小さなものでした。ゴッホは、それを大きな紙に繊細な筆致で描き出しています。

ゴッホはわずか37歳で亡くなりました。その前年、ゴッホは同じ「鎌で刈る人」をテーマに、鮮やかな色彩、うねるようなタッチで油彩模写を描きました。ゴッホにとって、ミレーの版画は生涯を通じて芸術の源泉だったといえるでしょう。

【ゴッホがみつめた「ミレー」】展に出品中
山梨県立美術館で開催中のミレー館特別企画『ゴッホがみつめた「ミレー」』に出品中です。ぜひご覧いただければ幸いです。
https://www.art-museum.pref.yamanashi.jp/permanent/index.html#area2

ポール・シニャック 《アニエール、洗濯船》

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ポール・シニャック Paul Signac
アニエール、洗濯船 Asnières, bateau lavoir
1882年 油彩・カンヴァス 38.6×56.0cm

赤や黄色、青といった原色が筆跡を並べるように描かれています。筆触分割によって波打つ水面と光の反射があらわされた画面には、19歳の若きシニャックが受けた水辺の印象が鮮やかに甦ります。シニャックは16歳の時に見たモネの作品とその色彩に感銘を受け、彼の筆触分割や視覚混合といった技法を学びました。本作でも、川面を描くタッチなどにモネの影響が伺えます。

 

 

ポール・セザンヌ 《ウルビノ壺のある静物》

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ポール・セザンヌ Paul Cézanne
ウルビノ壺のある静物 Nature morte au vase dit d'Urbino
1872-73年 油彩・カンヴァス 45.0×55.0cm

布の上に置かれた果物とウルビノ壺が明るい色彩で描かれています。それまで暗い色調で描いていたセザンヌはこの頃ピサロと出会い、ともに制作しました。年長のピサロに「三原色とその混色だけで描きなさい」と助言されたセザンヌは、その傍らで制作する中で次第に明るい色彩による画風へと展開していきました。

この作品はピサロとともにガシェ博士の家に滞在したときに描かれた作品です。果物や壺、布は、荒い筆跡の色彩であらわされています。壁に映る壺の影さえも平面的に描写され、画面全体が平らな色面で構成されています。セザンヌは同じモティーフを、別の角度からも描いています。そこでは壺や果物の影がはっきりとつけられ、より立体的な空間が暗示されています。この二作品からセザンヌはこの頃、光と色彩の効果を模索していたことがうかがわれます。