アルブレヒト・デューラー Albrecht Dürer
アダムとエヴァ Adam und Eva
1504年 エングレーヴィング、紙 24.8×19.0 cm

この作品はデューラーによる『旧約聖書』を主題とした銅版画です。アダムとエヴァは「創世記」に登場する最初の人類で、彼らは神に創造され、恥じらいや悲しみを知らず、裸のまま楽園に住んでいました。ある時二人は蛇にそそのかされて、神に禁じられていた「知恵の実」を食べてしまい、楽園から追放されます。本作ではエヴァが蛇から「知恵の実」を受け取り、アダムへと手渡そうとする場面が緊張感をもって描かれています。
背景にいるシカやネコなど多くの動物たちは、それぞれこの場面にかかわるシンボリックな意味をもたされています。デューラーや仲間の人文主義者たちは、こうした一見難解な図像に込められた意味を読み解いたことでしょう。
デューラーは、イタリアへの旅行以来、「理想的な人体のプロポーション」を求めて研究を重ねてきました。この銅版画でも著名な古代彫刻をもとに準備を重ね、構図を練りました。ここでは聖書の物語とともに、古代彫刻から学んだ「理想的な人体像」の実現が目指されています。