【仏教館】都の祈り 伊豆の祈り 

6世紀、日本に伝えられた仏教は、伝えられた各地で、風土や人々の営み、祈りに応じて、多種多様な仏教美術を開花させました。上原美術館は、優れた仏教美術を収集してきましたが、その多くは上質で、造形的に整ったものです。コレクションの仏像や古写経は、全てが都で制作されたものではありませんが、都風を色濃く示すもの。本展ではこれを「都の祈り」と表現し、展示いたします。
一方当館は40年に渡り、伊豆の仏教美術の調査研究を続けてきました。当館が伊豆で出会った仏像は、古いものは都風ですが、時代が降るにつれ、人々の生活に寄り添うような、素朴で時に愛嬌さえ感じさせるような親しみ深い造形となっていきます。
本展は、上原コレクションの、上質で美しい、いかにも都風の仏像や古写経と、伊豆に伝えられた、素朴で拙くすら見える半面、親しみやすく、魅力的な仏像をあわせて展示し、奥深い仏教美術の世界をご覧いただくものです。
上原美術館の二天像は、平安時代後期の等身大の像です。甲冑に身を固めた太い体躯、怒りの表情は巧みで、専門仏師の作に相応しく、たくましく屈強な戦士の姿です。一方で、河津町の普門院の二天像は、江戸時代の像。ガラス玉をはめ込んだ瞳を見開き、やはり武装する姿ですが、腕の上げ下げもどこかぎこちなく、ユーモラス。踏みつけた邪鬼は怪獣のようです。この二つは同じ仏で、甲冑を身に着け、邪鬼を踏まえる姿勢まで同じものの、造形は大きく異なります。
上原美術館の薬師如来像は、洗練された上品な姿。修理銘からかつては京都に伝えられたと考えられる、いかにも都風な仏像です。一方、下田市吉佐美地区の毘沙門天像の造形は素朴で荒削り。この二つの像の年代は数十年しか離れていないはずですが、造形感覚は全く異なります。仏教美術の多様で豊かな¬¬祈りの造形をご覧ください。

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