【仏教館】上原コレクション名品選 きれいなお経 かわいいお経

【仏教館】上原コレクション名品選 きれいなお経 かわいいお経

釈尊、諸仏の言葉とされるお経は、仏教徒にとって聖なる書物です。お経は心を込めて書写されるとともに、時に特別な料紙を用いたり、扉絵を描いたりして、装飾されました。本展はそのような「きれいなお経」を展示する企画展です。

平安時代には、藍で深く染めた紺紙に、金泥や銀泥で経文を書写する経典が多く制作されました。このうち名高いものに、奥州藤原氏の初代、藤原清衡が制作した中尊寺経、鳥羽天皇の発願による神護寺経、鳥羽天皇の皇后、美福門院が発願した荒川経があり、いずれも仏教の主要な経典や典籍を集成した、五千数百巻からなる一切経です。このうち当館はすでに中尊寺経、神護寺経を所蔵していましたが、新たに、荒川経を収蔵。本展ではこの三つをあわせて展示いたします。

紺紙金字経の変わり種が、一字宝塔法華経断簡です。紺紙に金泥で沢山の宝塔を描き、一基の宝塔に法華経の一文字を納めるように書写したもので、平安時代、長寛元年(1163)に心西という僧によって制作されたお経。本経も当館で新収蔵、初公開します。また、上下に藍のぼかしを入れ、銀箔を散らした料紙を用いた平安時代の古写経、雲紙法華経断簡(新収蔵)も本展で初めて展示いたします。

当館ではこのたび、鎌倉後期から南北朝時代に描かれた「善財童子絵」も収蔵いたしました。本図は二巻からなる巻物の断簡で、華厳経の入法界品の一場面を描くものです。入法界品は、数十巻からなる華厳経の後半、菩薩の道を求める善財童子が、各地の五十三人の善知識を訪ね、教えを受けるエピソードを記す部分です。このうち新収蔵の図は、善財童子が、三十四人目の善知衆芸童子を訪ねる場面。幼さの残る顔立ちの若き二人の求道者が、美しい自然の中で出会うさまを描く本図は、淡い色彩とあいまって、幻想的で詩情豊かな作品です。

きれいなお経、かわいい挿絵が描かれたお経や絵巻の数々をご覧ください。

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【近代館】特別展 梅原龍三郎と伊豆

【近代館】特別展 梅原龍三郎と伊豆

日本近代洋画を代表する画家のひとりである梅原龍三郎(1888–1986年)は、伊豆と深い縁がありました。梅原は生涯を通じて熱海や江ノ浦、大仁など伊豆や周辺の地を訪れます。そこで生まれる雄壮できらびやかな作品群は、代表作として広く知られるようになりました。

梅原はフランス留学から帰国した20代半ば、日本の風土をどのように描くか模索を重ねます。南仏を思わせる《熱海風景》は伊豆の風土を通じて日本独特の湿潤な光をあらわしています。40代になると熱海にある友人の別荘に度々滞在して、《紅良像》や《来の宮》を描きます。この頃の夏、梅原は家族とともに伊豆・西海岸の江ノ浦を訪れ、《江ノ浦 残月》など日本の風景を雄壮にとらえた独自の画風を確立していきます。第二次世界大戦が始まると、梅原は大仁に疎開しました。山上にある大仁ホテルに滞在した梅原は、そこから見える富士の威容に魅了され、戦後、富士山シリーズが生まれます。

本展では伊豆にまつわる初期から晩年の絵画を通じて、梅原龍三郎と伊豆の関係を紹介するほか、新たに発見された伊豆日記などの資料から、その時代背景を探ります。そのほか、《黄金の首飾り》や《ナルシス》など初期の代表作を合わせて展示し、梅原芸術の魅力に迫ります。

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【近代館】船と絵画—みなもに揺られて

上原コレクション名品選【近代館】船と絵画—みなもに揺られて

遠くの人やものを繋ぐ船は、古くから人々の生活のそばにありました。そして、画家たちは様々な思いとともに船を描きます。
新印象主義の画家シニャックは生涯30隻以上の船を所有し、海の風景を数多く描きました。《アニエール、洗濯船》は画家18歳の作品です。モネに憧れて絵を描き始めた若きシニャックによるセーヌ川のかがやきは、大海に船を漕ぎ出す自らの未来を暗示するかのようです。
旅の画家マルケもまたセーヌ川などで多くの船を描きます。マルケにとって船が大きな意味を持つようになったのは1920年のことです。北アフリカのアルジェを旅したマルケは、そこで生涯の伴侶と出会いました。その後、度々地中海を渡ったマルケは、船そのものが後半生をあらわす重要な乗りものとなります。
また、上原美術館のある伊豆・下田も船にゆかりの深い土地です。古来良港として栄えた下田港は、幕末にペリーが来航し近代の夜明けがはじまりました。1954(昭和29)年に下田を訪れた須田国太郎は港の向こうに並ぶなまこ壁の家々を印象的にとらえ、船が行き交う町の風情をとらえています。本展覧会では新収蔵となる須田国太郎《下田港》を初公開します。
そのほか、ルノワールやボナール、牛島憲之らによる船の絵画からそこにただよう旅情をお楽しみいただけましたら幸いです。

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【仏教館】きん ぎん すみいろ—新収蔵・高野大師行状絵巻断簡とともに

上原コレクション名品選 【仏教館】きん ぎん すみいろ—新収蔵・高野大師行状絵巻断簡とともに

仏教のお経(経典)は、お釈迦さまのことばとされ、仏教徒にとって特別なものでした。お経には特別な力があり、魔や災厄から私たちを救ってくれると考えられたのです。また仏教には仏の悟り(真理)そのものを仏の本体、本質とする考え方もあり、真理を解き明かすお経の語句、一文字一文字はそのまま仏そのものでもありました。そこで仏教徒はお経を書写するにあたって一字一字に心を込め、特別な紙を用い、あるいは金や銀の文字で飾りました。本展ではこうして生まれた珠玉の古写経を展示いたします。
また当館では、弘法大師(空海)の生涯を描いた「高野大師行状絵巻」の断簡を新収蔵いたしました。高野大師とは弘法大師(空海)のことです。唐で密教を学んだ弘法大師は、帰国に際して膨大な文物を日本に持ち帰りましたが、これらの品々はその後の日本仏教、日本の文化の発展に大きな影響を与えました。当館が所蔵した断簡には空海が収集した膨大な文物を遣唐使船から積み下ろす場面が描かれています。空海が持ち帰った文物の多くはほかならぬ経典や書物でした。日本に経典がもたらされる現場を描いた美しい絵画と美麗な古写経の数々をあわせてご覧ください。

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【仏教館】特別展 無冠の仏像—伊豆・静岡東部の無指定文化財

【仏教館】特別展 無冠の仏像—伊豆・静岡東部の無指定文化財

仏像ブーム、国宝ブームと言われて十数年。日本美術の人気は衰えを知りませんが、ブームの主役は国宝や重要文化財で、こうした指定文化財に多くの方の関心が集中しているようです。ところで、現在、文化財指定を受けている仏像は、過去に見いだされ、研究され、その価値が広く認知されることで、指定を受けるに至りましたが、実は今日でも日本各地には、その存在を知られることなく伝えられている貴重な文化財が多数存在しています。
上原美術館は開館以来39年にわたって継続して伊豆の仏像の調査を行い、伊豆に貴重な仏像が存在することを明らかにしてきました。その結果、文化財指定を受けた仏像もありますが、学術的な価値が高いものの、信仰上の理由などから指定を受けていないもの、評価が遅れている仏像も未だ多数にのぼります。また、当館は現在も仏像調査を継続中で、従来全く知られていなかった仏像が日々、見出されています。このような仏像は、現時点では文化財指定を受けていないものの、美術史上、あるいは地域の歴史を考えて行く上で、忘れてはならない、かけがえのない貴重な文化財です。
本展は、伊豆を中心に、静岡県の仏像・仏画の調査研究の最前線にあり続けている当館が独自の調査で見出した仏像に加え、過去に貴重な像であると評価されながら、文化財指定を受けてない、「無冠」の文化財を、厳選して展示するものです。知られざる仏像・神像の数々を是非ご覧ください。

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【近代館】上原コレクション名品選 まなざしをみる—画家とモデルの隠された視線

【近代館】上原コレクション名品選 まなざしをみる—画家とモデルの隠された視線

うっすらとした影の中からこちらを見つめるドラン《婦人像》。そのまなざしは、見るものに何かを語りかけるかのようです。絵の中のまなざしを辿ってみると、そこには時や場所を越えて、描かれた人との交流が生まれます。
絵画には、画家自身のまなざしも隠されています。マティス《鏡の前に立つ白いガウンを着た裸婦》は、大きな鏡の左端にカンヴァスとイーゼルが映り込んでいます。それらは画家の存在を暗示し、明るい色彩の中に複雑で豊かな空間を立ち上がらせます。
一見、何の変哲もない静物画にも画家のまなざしを見ることができます。セザンヌ《ウルビノ壺のある静物》は立体感をなくすかのように静物が真正面からとらえられています。セザンヌは同じ配置のモティーフを斜め上からも描いていますが、その試みは絵画における平面と立体の関係性を問うかのようです。安井曽太郎《銀化せる鯛》も不思議な構図です。この油彩画は、一か月以上描き続けて腐った鯛が「美しかつた。立派な銀の彫刻の様にも見えた」と、真上から見て描かれました。
鏑木清方《みぞれ》は、樋口一葉の小説「たけくらべ」の一場面です。うつむきがちのまなざしは、大人への成長の中で揺れ動く主人公の内面をあらわすかのようです。
本展では画家やモデルのまなざしに注目して、絵画の中に広がる不思議な空間へと入っていきます。まなざしが導く豊かな絵画の世界をどうぞお楽しみください。

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【仏教館】上原コレクション名品選 祈りの文字 祈りのかたち

上原コレクション名品選 祈りの文字 祈りのかたち

本展では、洋の東西を問わず、絵や文字に込められた「祈りのかたち」をご紹介します。江戸時代に活躍した沼津出身の僧、白隠慧鶴は仏の教えを優しく解き明かし、広く人々に伝える手段として、その生涯に多くの絵や書を描きました。飄々とした作風は、昔も今も多くの人々を魅了しています。上原コレクションの《達磨図》は、ぎょろりとした目で上方をにらむ達磨を画面中央に大きく描き、禅の言葉「見性成仏」が書き添えられています。墨のみで表現された世界は、禅の境地を伝えるようです。

また仏の教えを伝える経典は文字ひとつひとつに、祈りを込めて書写されました。《中阿含経》(奈良時代・8世紀)は細身の文字が謹厳な書体であらわされた優品です。一巻約9mの経典ですが、よどみのない筆致は最後まで途切れることがなく、緊張感が伝わってきます。
ほかにもルオーが描くキリスト像、仏教美術コレクションの顔ともいえる十一面観音像や、阿弥陀如来像も展示いたします。さまざまな文字やかたちに込められた「祈りのかたち」をお楽しみください。

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【近代館】上原コレクション名品選 花かおる絵画

上原コレクション名品選 花かおる絵画

「梅の花 香をかぐはしみ 遠けども 心もしのに 君をしぞ思ふ」(市川王、天平宝字2[758]年、万葉集)。これは今から1200年以上前の宴で、梅の香りに託して敬愛の心が詠まれた歌です。日本の芸術では古来より花の香りにさまざまな思いが重ねられてきました。その香りを想像すると、それまでには感じられなかった世界が目の前にあらわれます。絵画もまた、描かれた花の香りをイメージすると、そこには豊かな空間が広がっています。

ルドンが描き出す《花瓶の花》にはアネモネをはじめ色とりどりの花が咲き乱れています。ルドンは自らが描く花を「再現と想起という二つの岸の合流点にやってきた花ばな」と述べました。現実の花が夢幻の世界と合流するように混じり合うその香りは、パステルの不思議な色彩と相まって見るものを幻想的な世界へと導きます。当時の批評家はルドンの花の絵画について次のように述べています。「花がパステルになったのか、パステルが花に変容したのかだれもしらない。(中略)それは控え目だが変わることのない匂いがする。それは妖精だろうか。女神だろうか。いや、それ自身である」。

ピサロ《エラニーの牧場》では、牛が草をはむ田園風景の中に林檎の花が咲き誇っています。明るい色彩であらわされた花々は甘い香りを漂わせて、北フランスの湿潤な大気の中を吹き抜ける爽やかな風を感じさせます。安井曽太郎《桜と鉢形城址》は終戦間近の1945年春に描かれた作品です。疎開先である埼玉県寄居町に桜が咲き誇る田園風景には、穏やかな春の香りが広がります。

本展ではモネ、ルノワール、マティス、梅原龍三郎など上原コレクションから花の香り漂う絵画をご紹介します。美しい花々に包まれてゆったりとしたひとときをお過ごしいただけましたら幸いです。

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【仏教館】陰翳礼讃 影に浮かぶ仏の美 
【近代館】陰翳礼讃 闇に輝く絵画の光

陰翳礼賛

作家・谷崎潤一郎は1933 (昭和8)年、随筆『陰翳礼讃いんえいらいさん』を著しました。そこでは近代化の波に覆われつつある日本が直面する光と影についての葛藤と考察が綴られています。それから約九十年後の現在、日常を取り巻く光はさらに明るさを増し、影はその存在を潜めています。しかし、身の廻りを見渡すと至るところに影の存在があることに気づきます。身近なうつわやペン、そして自分の手を改めて見つめると光の傍に影があらわれます。そして、その影に気づけば、ものの存在が今までとは異なったかたちであらわれてきます。

「美と云うものは常に生活の実際から発達するもので、暗い部屋に住むことを餘儀なくされたわれわれの先祖は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に沿うように陰翳を利用するに至った」。谷崎は日本における美のあり方について、そう語っています。例えば、黄金が日本家屋の暗がりで放つ美しさを次のように述べています。「庭の明かりの穂先を捉えて、ぽうっと夢のように照り返している」、「私は黄金と云うものがあれほど沈痛な美しさを見せる時はないと思う」。金箔が施された仏像は、もともとお堂や厨子ずしの暗がりで拝まれていました。そうした仏像は陰翳の中でこそ本来の姿があらわれてくるのかもしれません。

絵画もまた、もともと明るい壁に飾るものではなく、薄暗い建物内で鑑賞されていました。特に日本家屋では床の間で鑑賞する掛軸が「陰翳に深みを添える」ものとして尊ばれてきました。そうした歴史的背景を持つ日本画には、暗い建築空間に広がるような繊細な余白の表現が殊のほか美しくあらわされています。

このような陰翳の感覚を持つ日本人にとって、西洋の油彩画を描くことはひとつの新たな挑戦でした。京都帝国大学で西洋の美学美術史を学んだ須田国太郎もそうした画家のひとりです。須田は1919 (大正8)年にスペインへ渡り、プラド美術館などで伝統絵画の陰影表現を学びました。帰国後、京都にある日本家屋の四畳半の居間で制作し続けた須田は、日本独特の深い陰翳をまとった油彩画を生み出していきます。

本展では上原コレクションの仏像や絵画から陰翳の中に潜む美の魅力に注目します。闇を柔らかく照り返すような十一面観世音菩薩像や阿弥陀如来像をはじめ、日本の物語に潜む闇を余白に描き出した小林古径の日本画、油彩画の影に独特の深い存在感をあらわした須田国太郎らの絵画などをご紹介します。また、谷崎潤一郎が旧蔵した小林古径《杪秋びょうしゅう》も展示します。現代の陰翳の中に浮かび上がるジャンルを越えた美の世界をお楽しみいただければ幸いです。

【仏教館】【近代館】 陰翳礼讃

開催期間: 2021年4月29日(木・祝)~2021年9月26日(日)
開館時間: 9:30~16:30(入館は16:00まで)
休館日 : 展覧会会期中は無休
入館料 : 大人1,000円/学生500円/高校生以下無料
※仏教館・近代館の共通券です
※団体10名以上10%割引
※障がい者手帳をお持ちの方は半額
会場  : 上原美術館 近代館・仏教館

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「陰翳礼讃」無料配布ハンドブック

現在開催中の展覧会無料配布ハンドブックを作成しました。
会場で配布していますが、オンラインでも閲覧いただけます。
※スマートフォンではスワイプでページをめくれます。

十一面観世音菩薩立像

十一面観世音菩薩立像

十一面観世音菩薩立像

十一面観世音菩薩立像

・年代:平安時代(10世紀)
・法量:像高52.2cm
・指定:重要美術品

十一面観音は十の頭上面を持つ観音で、この姿はあらゆる方角を見渡して救済を行う、観音の救済力の表現とされています。

本像は頭部から台座蓮肉の一部までをサクラと思われる広葉樹の一材から彫出した一木造の立像で、頭上面と右肩以下の右腕、左の肘から先は別に造って取り付けています。像を蓮肉まで含めて一材でつくり、内刳(内部を刳り抜くこと)を行わない技法、装身具を彫出する手法は平安時代前期に見られる特徴であり、太い鼻梁とつり上った瞳が生む強い表情、奥行のある頭部、両胸の下をC字型に刳る表現、下半身に着用した裙(巻きスカート)に見られる翻波式衣文(大きい襞の間に小さな襞をあらわす表現)も古様です。一方で本像は全体として穏やかな作風を示しており、九世紀の仏像に見られる厳しい表現が、温和な和様へと向かいつつある時期、十世紀初めの仏像と考えられます。

動画による作品解説

上原美術館