遠くの人やものを繋ぐ船は、古くから人々の生活のそばにありました。そして、画家たちは様々な思いとともに船を描きます。
新印象主義の画家シニャックは生涯30隻以上の船を所有し、海の風景を数多く描きました。《アニエール、洗濯船》は画家18歳の作品です。モネに憧れて絵を描き始めた若きシニャックによるセーヌ川のかがやきは、大海に船を漕ぎ出す自らの未来を暗示するかのようです。
旅の画家マルケもまたセーヌ川などで多くの船を描きます。マルケにとって船が大きな意味を持つようになったのは1920年のことです。北アフリカのアルジェを旅したマルケは、そこで生涯の伴侶と出会いました。その後、度々地中海を渡ったマルケは、船そのものが後半生をあらわす重要な乗りものとなります。
また、上原美術館のある伊豆・下田も船にゆかりの深い土地です。古来良港として栄えた下田港は、幕末にペリーが来航し近代の夜明けがはじまりました。1954(昭和29)年に下田を訪れた須田国太郎は港の向こうに並ぶなまこ壁の家々を印象的にとらえ、船が行き交う町の風情をとらえています。本展覧会では新収蔵となる須田国太郎《下田港》を初公開します。
そのほか、ルノワールやボナール、牛島憲之らによる船の絵画からそこにただよう旅情をお楽しみいただけましたら幸いです。
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