【仏教館】企画展 時の結晶 仏教美術 ―上原美術館の40年―

仏教美術は、仏教を核に、風土と文化、祈りが長い時をかけて生み出した、美の結晶です。一方、星の数ほど存在するモノの中から選び抜かれたコレクションも、独自の美意識の結晶といえるでしょう。本展は、上原コレクションの名品を通じて、上原美術館の40年に渡る収集の軌跡を振り返るものです。
当館の前身、上原仏教美術館が初めて収蔵した古美術は、平成元(1989)年収蔵の、十一面観音像でした。本像は今から千年以上前に造像された古像。しっかりとした鼻筋と、目尻の上がった目は、どこか異国的で、若々しく強い意志を感じさせる顔立ちです。
その後、当館は、村上華岳や平山郁夫の作品を相次いで収蔵しましたが、平成12(2000)年に上原近代美術館が開館すると、近代美術館との差別化の点から、再び古美術が見直されます。転機となったのは、平成19(2007)年収蔵の中尊寺経でした。これを機に、当館では古写経の収集を開始し、奈良時代の天平写経や、神護寺経、荒川経など平安時代の装飾経を相次いで収蔵。古写経収集は、当館の収集の一つの柱となりました。平基親願経は当館の古写経コレクションの白眉で、紺地を背景に美麗に彩色された童子が舞う扉絵が美しい作品です。
仏像の収集も継続中です。左写真の鎌倉時代の阿弥陀如来像は、当館の古仏像コレクション第2号。その後も平安時代の薬師如来像、二天像などを収蔵しましたが、制作年代が確定できる仏像が少ない中で、奇しくも同じ文永7(1270)年に造像された阿弥陀如来像と大日如来像を収蔵できたのは、収穫でした。
近年の上原美術館は、古い絵画作品も収蔵しています。「諸尊図像集断簡」は、本年度新収蔵作品。鎌倉時代の密教図像集の、不動明王に従う八大童子を描いた部分の断簡です。鎌倉時代に北条実時が設立した金沢文庫伝来の貴重な作品で、梅原龍三郎の旧蔵品でもあります。上原美術館の40年に渡る収集の「結晶」を是非ご覧ください。