【近代館】印象派をたのしむ 上原コレクションのちいさなまなざし
【仏教館】伊豆のみほとけ
開催期間: | 2025年10月4日(土)~2026年1月12日(月・祝) |
開館時間: | 9:30~16:30(入館は16:00まで) |
休館日 : | 展覧会会期中は無休 |
入館料 : | 大人1,000円/学生500円/高校生以下無料 ※仏教館・近代館の共通券です ※団体10名以上10%割引 ※障がい者手帳をお持ちの方は半額 |
会場 : | 上原美術館 近代館・仏教館 |
【仏教館】伊豆のみほとけ
川端康成は紀行『伊豆の旅』において、「伊豆は南国の模型である」と書きました。これは伊豆の風光や植生が本州の他地域と異なり、南方を思わせることを述べたものですが、白砂の浜、入り組んだ海岸線とそこに営まれた小さな港町、照葉樹に覆われた山々に抱かれた集落、河川が開いた小平野、火山の恵みの温泉…地区ごとに多彩な顔を見せる伊豆半島は、様々な要素が詰まって、さながら模型のようです。このように伊豆は多様な小世界が集まって構成されていますが、それぞれの世界には、その地に生き、歴史を刻んだ人々が信仰した仏像が大切に守り伝えられています。
本展ではこのような伊豆の仏像のうち、平安時代から鎌倉時代に造像されたお像を中心に二十数体を厳選して展示いたします。
表の十一面観音像は、昭和61年の当館の調査により、南伊豆町の漁港、入間の海蔵寺から見いだされた像です。この仏像は調査後、厨子のなかに厳重に納められ、長らく秘仏となってきましたが、およそ40年ぶりの公開が実現しました。このように本展は、寺院やお堂を守る地域の方々の特別なご厚意でご出展いただいた、秘仏や通常非公開の仏像を展示する特別展です。伊豆のみほとけとの一期一会の出会いを是非お楽しみください。
展覧会紹介動画
【近代館】印象派をたのしむ 上原コレクションのちいさなまなざし
小高い丘から見下ろすパリ郊外のシャンパーニュ平原にセーヌ川がゆったりと流れています。草木が生い茂る小道からは、静かな自然に分け入る葉擦れの音さえ聞こえるかのようです。鋭く伸びる枝の向こうには高い空が広がり、紫色に霞む遠くの大地に爽やかな風が吹き抜けます。印象派の画家アルフレッド・シスレーが描いたこの油彩画は、フランス語の原題に「ロッシュ=クルトーの丘から見たシャンパーニュ平原」と付けられていますが、一方で日本語のタイトルは「秋風景」となっています。そのわずかな言葉の響きには作品の叙情性が秘められており、この絵を愛した国内のコレクターのちいさなまなざしが垣間見えるかのようです。眼の前の自然の変化をとらえようとする印象派のまなざしは、どこか移ろう季節を愛でる日本人の自然観と共通する感性が息づいています。
印象派の中でも徹底して移ろいゆく光を捉えようとしたのはモネでした。《雪中の家とコルサース山》はモネが50代の冬、北欧ノルウェーで描いた作品です。モネは380メートルほどのこの雪山を富士山に見立て、変化する光の中で幾つもの油彩画に描きました。それら連作はモネ自身が収集していた葛飾北斎の浮世絵、富岳三十六景を彷彿とさせます。そうしたシリーズの一つである本作をモネから直接購入したのは、黒木三次・竹子夫妻でした。黒木夫妻は日本びいきのモネと親しく交流し、1919(大正8)年、ジヴェルニーのモネ邸にて直接この作品を譲り受けます(参考写真)。帰国後、黒木氏は国内の展覧会に出品、岸田劉生をはじめ多くの画家がこの絵を目にします。その後、関西のコレクター和田久左衛門の所蔵を経て、2005(平成17)年に上原美術館に収められました。日本に憧れたモネのまなざしは、移ろう自然を愛でる日本のコレクターのまなざしと重なり、今では富士山の近くの伊豆に飾られています。
本展ではコレクターや鑑賞者、画家自身の「ちいさなまなざし」をキーワードに印象派の絵画をご紹介します。若きルノワールがモネと並んで描いた《アルジャントゥイユの橋》、農村を愛したピサロが描く《エラニーの牧場》など、上原コレクションより印象派の絵画をどうぞお楽しみください。
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