須田国太郎
農村展望(小諸風景)
1934(昭和9)年 油彩・カンヴァス 59.0×90.0cm

みはるかす山々の向こうに夏の雲が湧き立ち、眼下には山影が広がります。影には緑や赤など色が重層的に塗られ、これらの色彩に気づくと山々が夏の光にいっそう輝くようです。
本作は須田国太郎が1934(昭和9)年夏、長野県小諸附近を訪ねたときに描かれました。小諸は北東に浅間山を抱える標高約600メートル以上の高地で、主に浅間山からの火砕流台地と、千曲川などによる洪積台地からなっています。火山と河川が長い年月をかけて生み出した雄大な風景を、須田はひとときの夏の光が織り成す明暗の対比で捉えています。遠くの山に見える家並みは、大地の中に生きる人々の生活を浮かび上がらせるかのようです。