ポール・セザンヌ ウルビノ壺のある静物

ポール・セザンヌ Paul Cézanne
ウルビノ壺のある静物 Nature morte au vase dit d'Urbino
1872-73年 油彩・カンヴァス 45.0×55.0cm

布の上に置かれた果物とウルビノ壺が明るい色彩で描かれています。それまで暗い色調で描いていたセザンヌはこの頃ピサロと出会い、ともに制作しました。年長のピサロに「三原色とその混色だけで描きなさい」と助言されたセザンヌは、その傍らで制作する中で次第に明るい色彩による画風へと展開していきました。

この作品はピサロとともにガシェ博士の家に滞在したときに描かれた作品です。果物や壺、布は、荒い筆跡の色彩であらわされています。壁に映る壺の影さえも平面的に描写され、画面全体が平らな色面で構成されています。セザンヌは同じモティーフを、別の角度からも描いています。そこでは壺や果物の影がはっきりとつけられ、より立体的な空間が暗示されています。この二作品からセザンヌはこの頃、光と色彩の効果を模索していたことがうかがわれます。